神奈川県公立高校入試の倍率が発表されたので県西地区の考察をしてみる

あれはまだ公立高校の出願が始まる前、先週のこと。生徒がこんなことを言っていました。

「先生、西湘の倍率すごい髙いんだって!」

……あれ?なんか同じような台詞を1年前にも聞いたような……

県西地区は倍率低いんだからアレコレ騒いでちゃダメ

繰り返しますが、まだ公立高校の出願は始まっておりません。そこで情報の出所を聞いてみました。

「学校の先生が言ってた」

おおかたその中学校で出願者が多いのを受けて、先生が妄想した内容を生徒に伝えたのでしょう。当然のことながら、たかだかイチ教師が神奈川県全体の出願状況を把握しているわけありませんし、中学校間で情報を交換していたとしたらもっと大問題ですからね。

別にその先生じゃなくても、地元の進学校である西湘高校が人気なのは、この地域の教育業界の人間なら誰でも知っています。地域トップ校である小田原高校は雲の上として、実質の2番手校である秦野高校は小田原から通うのが立地的に大変です。よく雪も降るしね。

西湘高校なら鴨宮駅からちょっと歩けば着きますし、ウチの教室がある泉中学校の学区なら、チャリで通うのも余裕です。そりゃ人気も出るでしょう。

何が問題かというと、出願前に倍率がどうなるかはフタを開けるまで誰にも分かりません。あくまで予想でしかない情報です。予想という事を前置きするならともかく、生徒たちがあたかも確定情報のように吹聴しているこの状態、何とかならないでしょうか。

毎年誤情報に躍らされる生徒を戒めるのに手を焼いています。

さて、長い前ふりはこのくらいにして、確定した志願変更前の倍率を見てみましょう。

県西における1/30志願変更前倍率は?

昨年も書いたと思いますが、ごく一部の高校を除き、いつも通りです。
ではみなさん、受験勉強に戻りましょう。

いえ、県西地区の場合、倍率が高くなるのは小田原か西湘しかないですから。あとは例年1.0~1.2倍の枠に収まります。

よほど模試の得点がギリギリで、志願変更を真剣に考えざるをえない子以外はこの先を読む価値は全くありません。さっさと勉強して下さい。

平塚江南高校に異変あり

高校名 募集定員 1/30出願者数 1/30志願変更前倍率 前年度倍率 前々年度倍率
小田原 318 414 1.30 1.28 1.15
平塚江南 318 319/td> 1.00 1.32 1.18
厚木 358 507 1.42 1.25 1.25

昨年の大磯高校に引き続き、平塚地域に何があったのか。平塚江南高校がまさかの1.0倍ということになりました。事前調査の段階からそれほど高くはならないと予想できたものの、さすがに地域トップ校としてレベルを保つのが困難な倍率です。

進学重点校である厚木高校は期待値が高く、人気が急騰していますね。文系殺しな特色検査は好きでしたが、今年は共通化された問題になるため、ちょっと文系の人も一安心でしょう。

そして地元のトップ校、小田原高校。質の高い生徒を確保するには充分な倍率になりました。

2番手以下の高校はまたも大きな動きがありそう

トップ校以外の2番手、3番手の学校を見てみましょう。チョイスはウチの塾生が多く受験する高校です。

高校名 募集定員 1/30出願者数 1/30志願変更前倍率 前年度倍率 前々年度倍率
秦野 358 385 1.08 1.16 1.15
西湘 308 406 1.32 1.29 1.11
大磯 278 259 0.93 1.10 1.23
伊志田 268 339 1.26 1.11 1.13
茅ヶ崎 278 392 1.41 1.33 1.33
足柄 238 237 1.00 1.09 1.11

昨年と全く同じ状況になったのが、西湘高校と大磯高校です。西湘高校に人気が集中し、ほぼ同レベルである大磯高校が定員割れ。

平塚江南は特色検査を実施するということもあり、敬遠される理由は何となく理解出来ます。でも、ウチの大磯生から話を聞く限り、特に不人気になる要素もないのですが、誰か事情通の方がいたら定員割れになる理由を教えて欲しいです。そんなに津波が怖いのかな?

ちなみに足柄高校もだいぶ出願者が少ないですが、その理由はよく分かりますので特にコメントはしません、炎上したくないので。興味がある人は個人的に聞いて下さい。

定員割れ連発の専門学科

普通科以外の専門学科は、少々極端な結果となっています。近隣の3校を取り上げてみます。

高校名 学科・コース 募集定員 1/30出願者数 1/30志願変更前倍率 前年度倍率
小田原東 普通 118 97 0.82 1.07
ビジネス 118 118 1.00 0.92
小田原城北 機械 78 67 0.86 1.00
建設 39 38 0.97 1.15
電気 78 53 0.68 1.03
デザイン 39 35 0.90 1.05
吉田島 都市農業 39 39 1.00 1.10
食品加工 39 37 0.95 1.18
環境緑地 39 37 0.95 0.72
生活科学 39 42 1.08

やはりこれは、県西から人が消えたとしか考えられません。

そう思わざるを得ないレベルの定員割れ。このままでは高校自体のレベルがどんどん低下します。もはや倍率1倍を超えている方が少ないのが衝撃です。

このレベル帯の公立高校へ進学するならば、私立高校へ進学した方がその後の進路は有利です。もちろん経済的に許すならという前提はありますが、私立実質無償化の影響はあると思います。特にこのレベル帯は無償化の影響が上位層より大きくなります。理由に関して詳しい言及は避けますので察して下さい。

志願変更による動きはどうなるか

受検生本人は志願変更の動きを読めないと思いますので、必ず通っている塾の先生に聞きましょう。とりあえず、ウチの生徒や塾に通っていない受検生に向けて情報提供をしようと思います。

トップ校同士のスライドはあまりない

小田原に人気が集まり、平塚江南に受検生が集まっていない。こうなると小田原から平塚江南に鞍替えする受検生がたくさん出るんじゃないか、そう予想されると思います。

ですが、過去の事例を見てもそういったスライドはあまり起こりません。どちらの高校も地元から愛されている高校ゆえ、旧学区を越えて集まる学校では無いからです。また、小田原高校の倍率が破滅的に高かったら平塚江南に流れると思いますが、昨年と大差ありませんので、それほどビビる受検生がいないと思われます。

厚木は特色検査があり、レベルも平塚江南や小田原より一回り上なので、平塚学区から厚木を目指している層が諦めて下げるケースはありそうです。それでも平塚江南の倍率が大幅に上がる事はないでしょう。1.07倍程度に落ち着くのではないか、と予想します。

中堅校は大磯高校に集中か

昨年同様、大磯高校を定員割れのまま放っておくような流れではありません。西湘高校から20人以上の動きはあるのではないかと考えています。また、茅ヶ崎北陵が大人気だったので、ボーダー上にいる層からの流入も見込めそうです。結果、大磯高校は+40人程度の増加で1.08倍になると予想します。少なくとも定員割れは解消されますね。

さて、西湘から足柄という流れも無視できません。正直言って県西は高校間のレベルがかなり離れていますので、普通に考えたら西湘から足柄は下げすぎなのですが、かといって中間の高校は?というと「知らない」というケースが多いようです。

特に通塾層ではない受検生の場合、学区制度のあった保護者の感覚が根強くなってしまうため、県西限定で考えてしまう恐れがあります。小田急なら伊志田、JRなら茅ヶ崎あたりが西湘から下げた場合の受け皿になりますので、検討してみるのもアリでしょう。

ということで、地域性もあって足柄にも一定数流れます。+15名は見ておきたいところです。

専門学科はもう打ち止め!?

少なくとも県西学区の専門学科を見る限り、定員割れが多すぎるのでこれ以上の受検者数増加は見込めないと思います。

例えばこれが、城北が人気、吉田島が不人気、とかでしたら流れも起こるのですが、現状どちらも定員割れにあえいでいる状態ですので、最終的に定員割れが解消されない可能性が高いでしょう。

また、総合学科で言えば小田原東のビジネスと秦野総合で動くケースがありますが、やはり今年はどちらも人が集まっていませんので、動く理由は全くありません。

まとめ

志願変更を考えている受検生に参考になれば、と思ってまとめました。入試において、「初志貫徹」が一種の美学のように語られるケースがありますが、そんなものはナンセンスです。最初に目指した高校へチャレンジして合格するならもちろんそれにこしたことはありませんが、残念ながら伸びが足りず現状合格の可能性が低いのなら、それは努力か実力がその高校に不足をしているということ。

それならば、冷静に自分の力にマッチした高校へ変更して、伸び伸びと高校生活を送った方が充実する可能性は高いでしょう。

ご家庭によって方針は様々ですので、それ以上踏み込んだことは言えませんが、初志貫徹してチャレンジする意義もある一方で、合格するという成功体験を経験させてあげることも充分に意味があります。その子の性格にもよるでしょうけどね。

ですから、志望校変更が可能なこの時期に、倍率というデータを見て悩むのは必要な事です。

ただ、志願変更をしないなら倍率は何の意味もなしません。むしろ定員割れを起こしているのを喜んで勉強の手を緩めたりしたら、それこそ将来へ大きなダメージになります。高校は受かることがゴールではないからです。

志望校を決めたらやることは一つ。合格に必要な得点力をつけることです。1.3倍くらいの倍率ならば、合格に必要な得点さえキープ出来ていれば何も不安に思うことはありません。見るべき数字は倍率ではなく、得点です。

残すところあと2週間。志願変更後の倍率はもう何も意味をなしません。受検生に出来る事は倍率にビビることでも倍率に浮かれることでもなく、全力で受験に備えること。学習面も、体調面も、精神面も、ベストな準備を心がけて頑張って欲しいと思います。