塾で出来たのに学校で出来なくなる怪現象は「上書き」が原因

私が担当する数学では、毎回確認テストをやっています。以前は問題数がまちまちでしたが、数年前から問題数は10問で固定し、復習が6~7問、前回授業の内容が3~4問という構成です。

前回授業の内容を出題する目的は、言うまでもなく「前回内容の定着」を確認するためです。そりゃそうだ。

塾の授業は自分で言うのもアレですが、分かりやすいのがウリです。でも、分かりやすい授業をしているだけでグングン生徒が伸びるかというと、そんな甘いことはありません。指導の割合的には3割くらいですかね。

分かった!=解ける!というのは授業の当日だけでしょう。確かに授業中解かせると、そのままマネをするのでほとんど解けます。これが次回の授業のときもキープされているかをチェックしないといけません。それが確認テストです。

確認テストをやらずして生徒を伸ばす方法を私は知りません。テストがない個別指導とか、どうやって伸ばしているのかノウハウを教えて欲しいと切に願っています。

で、何が本題かというと、授業中はちゃんと解けるようになったものが、1週間たつと解けなくなってしまうのです。この原因の1つに「学校の上書き」があります。今回はこれについて持論を述べようかと思います。

「学校の上書き」が「学校の上履き」に見えたのはきっと錯覚です。

塾で教わる内容と学校で教わる内容の違い

学校は学習指導要領に沿って教科書内容を正しく教える場所です。だから、どの学校でもどの先生でも教えている内容は同じ。先生によって差を感じるのは実力差なのであって、内容は変わりません。

ときどき教科書内容から1歩踏み越えて発展的な内容を教える先生もいらっしゃいますが、これは先生のボランティア精神による善意の表れ。本来は教科書内容だけ淡々とやっていれば問題ありません。しかし、生徒のためになると考えてプリントを作ったり時間を割いたりして教えてくれるのです。

先生の中には、教科書通り教える事に歯がゆさを覚える方もいらっしゃるでしょう。しかし、年間時間数や校務分掌や部活動によって授業内容に限界が生じるため、諦めざるを得ないのが実情です。

一方、塾は何を教えてもおとがめがありません。それこそ高校生の内容を中学生に教えるのも自由。

例えば私の指導スタンスは、「ミス無く正確に、かつ速く解ける方法」を指導しています。教科書通りの方法ではどうしてもミスが出てしまうものもありますので、アレンジをしたり途中式を増やしたり(減らしたり)することで、ミスを未然に防ぐのです。

一発公式も多々教えます。一般の方の塾のイメージはこちらですかね。それほど特殊なものを教えるわけではありませんが、一般的な塾だったら当然教えるような裏技は当然指導します。とはいえ研究の薄い大学生講師の場合知らないことが多いので、そこらへんの大学生を引っ張ってきただけの個別指導の場合教わることはできません。ウチは一応専門職ですからね、そのあたりは網羅しています。

さて、授業で良い解き方を教わり、その場で使えるようになったのです。あとはテストでそれを生かすだけでしょう。

学校の上書きで解けなくなる

塾で知った新しい知識を元に学校へ乗り込みます。当然学校では効率の良い方法ではなく、教科書通りの方法を学習するわけですが、そこで一部の生徒は学校の解き方を「上書き」してしまいます。

その後塾でテストをやらせると、なぜか解けなくなっている。よく解法を見ていると、教えたとおりの方法で解かず、学校で教わった方法に切り替わっています。オーマイガー。

別にそれが完全にダメと言っている訳ではありません。ですが、教科書通りの方法だとミスをする子がいます。中堅以下のレベルの子ほど、学校の知識だけが頭に残り、せっかく習った塾の知識が消え去っているのです。

上書きをすると塾に通う意味が無くなる

せっかく塾で習った方法をマスターすれば大きく得点を伸ばせるというのに、それを上書きして無くしてしまう。これでは何のために塾へ行っているのか全く分かりません。

学校で習っている内容をそのまま完璧にマスターすれば何も問題ありませんが、それが出来るならハナから塾は不要ですよね。学校の方法だけでは理解しきれない、上手く解けないという悩みを抱えている子、そして学校の方法より更に高みを目指す子、こういった子のために塾があるのです。

塾に通っているならその塾の教えたとおりに解くことを身につけるべきです。それを捨て去って、学校の内容に戻ってしまうなら塾は辞め、学校の勉強だけ必死にやるべきでしょう。

もちろん学校の補習に特化した塾なら話は別です。そこは学校の通りに身につけることが目的なので、塾でも同じように教わります。

要は、塾通いをしているなら、その塾のやり方に乗っかるべきなのです。

学校の上書きが起こる原因は

学校の授業で上書きが起こる原因は2つあります。

定着が遅い

ウチの塾のように、学校のペースとさほど変わらないペースで進める塾は、塾でやってから1~2週間後に学校で習います。

この際、塾の授業を受けてからすぐに復習をして、宿題を通じて充分な演習をして定着していれば、学校の内容で上書きされることはありません。

ところが、宿題をやらずに引っ張ってしまうと、人間の記憶はあっという間に薄れていきます。そこに学校の内容があたかも新しい内容かのように入ってしまうと、一気に上書きされてしまうのです。

ウチの塾も来年からカリキュラム変更で授業進度が速くなりますから、このような事は起こりにくくなるでしょう。ただ、あまりに速すぎると、一度インプットされた内容が薄れてしまい、学校の内容にあっけなく上書きされてしまいますので要注意です。

容量が少ない

脳の容量が少ない子は、複数の解き方を同居されることができません。すると、基本的に新しい方が上書きをしてしまいます。誤解を招きそうなので補足をしておきますが、決して頭が悪いわけではなく、多くの知識を入れる事を拒む姿勢の問題です。

よって、こういうタイプの子たちは「別解」に興味を示しません。多少良いやり方だったとしても、彼らにとっては「面倒そう」の一言で片付けられてしまいます。この状態が続いている限り、伸びるペースは非常に遅くなります。

このタイプの子は口癖のようにこう言います。

「学校と塾と教え方が違うから分からない」

教え方が違うのは当たり前です。同じように教えるなら我々いらないじゃないですか。

学校の上書きをチェックする

程度の差はあれど、学校の上書きは誰しも起こりえます。その都度声をかけ続けて修正していくことで、いずれ解決していきます。

大事なのは、学校の知識が上書きされた段階ですかさず指導をすること。そのために2つの取り組みをしています。

1つはノートチェックです。先日詳しく公式サイトで記事を書きました。

参考 生徒のミスを見逃さない、宿題ノートチェックのススメエコール学院公式サイト

宿題ノートをチェックして、教えたとおりに解いているか、厳しく見ています。学校で上書きどころか、ワークの解説に侵食される子も(そういうのは写しているといいます)。

もう1つは最初に書いた確認テストです。その生徒の力なら解けるであろう問題で不正解だったとき、かなりの確率で学校の上書きが起きています。

チェックテスト後、全員の答案を見て回っていますし、その日のうちに全て解き直して提出させていますので、解き方を見れば一目瞭然です。中には授業ノートを見た瞬間「アッ」と声を出す生徒まで。忘れてたことに気づくだけ素晴らしいですね。

まとめ

何度も繰り返しますが、学校のやり方、ひいては教科書のやり方がダメだと言っている訳ではありません。私も授業の6割は教科書通りに教えます。

ただ、それでは不足するから塾に来ている訳ですし、こちらで期待に応えようと出来るだけ生徒のレベルにあった解法を教えています。

塾に通っているからには、その通り身につけるのが近道です。それが完璧に近づいてきたら、自分なりにアレンジをするのも良いでしょう。

1問の解き方を何通りも教えることがあります。教科書通りの方法・それを簡単にやる方法・発展的な問題でも通用する方法など、多岐にわたります。これは自分の目指すところ、志望校なり、目標点なりに合わせて取捨選択すれば良いのです。

そういった技術をオール無視して教科書通りのやり方だけしか身につけようとしないのは、自ら可能性を摘んでいるようなものですからね。

そんなわけで先週中1生に話した内容をざっとまとめてみました。

その点、中3の先輩たちは上書きが起こりにくくなっていますね。さすがです。

実は学校の上書きどころか授業を軽視しているからという線もありそうで怖いのですが……