小学生社会見学で山梨に行ってきたお話 後編

社会見学に行ってきたレポートをしようと思って講習会の合間にチマチマ書き続けて早一週間。本当にチマチマ過ぎて全然書き終わりませんでした。さすがは講習期間です。

そこで後編は一気に書いていきたいと思います。早く書かないと忘れてしまいますしね。

真夏の鳴沢氷穴でひと涼み

連日最高気温が35度超なんていうギャグみたいな天気が続いていましたが、本当に幸運な事にこの日は最高気温が30度を下回る奇跡的な天候です。それでいて雨が降っていないというのも素晴らしい。

とはいえ、そこは夏ですから、ジメジメと蒸し暑いのは変わりません。バスは凍えるくらい寒い(笑)のですが、一歩外に出るとムッとします。

そんな我々にうってつけだったのが、富士の奇跡、鳴沢氷穴です。

富士山麓には洞穴がたくさんありますが、その中で最も有名な穴です。最深部には氷があるくらい気温が低いのが特徴です。

ご老人にはオススメ出来ない過酷なスポット

出発時にした失敗

私は数年前に家族と来たことがありますので、中の様子を知っています。それだけに上着を持ってき忘れたことを猛烈に後悔していました。いえ、朝着替えているときは覚えていたのです。その後子どもの面倒を見てゴタゴタしているうちにすっかり忘却の彼方に……行きのバスの中で思い出したときは後の祭りです。

何人かの生徒は完全に油断しています。フフフ……この氷穴の恐ろしさをまだ理解していないようです。

階段を降りながら氷穴の中へと進んでいきます。ちょうど地面の高さと同じラインより下に来たところで、一気に気温が下がります。その差、20度近く。

前にいる子どもたちが口々に悲鳴を上げます。

「さむーい!」「やばーい!」「死んじゃう!」

子どもたちは死にはしないと思いますが、ご老人は本気でシャレにならない気温差です。いわゆるヒートショック間違いなしです。

これは体験してみないと分かりませんが、本当に寒いです。完全に空気の層が分かれており、見えない壁でもあるかのような温度差があります。

押し寄せる天井

もう1つ私たちを苦しめたのは、洞穴の高さです。最も天井の低いところで91cmとなっており、私のような大人の男性はかがんでも頭がぶつかります。どのように進むのかというと、完全にしゃがんだ状態でズリズリ歩くのです。それでも時折ヘルメットに天井がゴスン!とぶつかる音がします。

ただ天井が低いだけでなく、下り坂かつコケで滑るという三重苦。よくこれでケガ人が出ないもんだと逆に感心してしまいます。

寒さに慣れてきた頃にトドメを刺すのが、最下部の気温です。氷が溶けない状態、つまり0℃を保っているのですね。もう無理です。凍えてしまいます。ここまで来ると子どもたちも叫ぶ元気すら残っていません。

寒さと引き替えに、非日常的な幻想的な光景が望めます。薄いブルーの照明に照らされた氷が周囲に広がり、静謐な空気に響く子どもたちの叫び声すら神々しく感じます。しかし氷に目を奪われていると、我々の体力も同時に奪われていきます。

早々に退散し、ちょうど地上のラインから上に出た瞬間、体に異変を感じます。締め付けられていた血管が一気に解放される感覚です。あ、これご老人にアカンヤツです。もっとも、氷でツルッツルに滑る中を中腰で延々進まなければならない場所に挑むお年寄りなら大丈夫なのでしょうが。

神秘の森 青木ヶ原樹海でトレッキング

これは裏話なのですが、学院生に今回のツアーを案内する際、「ネイチャーツアー」とか「遊歩道トレッキング」と表現しており、「青木ヶ原樹海トレッキング」とは書いていなかったんですよね。

もちろん青木ヶ原樹海の持つ負のイメージを考慮しての事です。

しかし、それは杞憂でした。小学生は知識がなさ過ぎて青木ヶ原樹海に全く偏見が無かった!取り越し苦労!

数々の逸話や都市伝説もまるで知らなかったので、ガイドさんが「磁石が効かないと言われていますが」と説明しても、そもそもそれ自体が初耳という……意外と子どもたちの知識って浅いんだなあと妙に感心してしまいました。偏見が無いと言えば聞こえは良いですが、恐らくピッタリなのは「知らぬが仏」ですかね。

鳴沢氷穴からバスでコウモリ穴へと移動し、そこで3つのグループへ分かれます。螢田教室は私がもう1つ指導している板橋教室の生徒と合同のグループになりました。

プロのガイドさんが1グループに一人ずつ付いて、ネイチャーツアーの開始です。

目で見て肌で感じるのは最高のインプット

まずガイドさんから樹海の概要についてのお話。樹海はマグマが固まって出来た大地なので、土がありません。地面はゴツゴツした溶岩です。フカフカな部分は土と思いきや枯れ葉や枯れ枝がコケの上に敷き詰められたもの。

樹木も根を地中に張ることが出来ず、地表にウネウネと広がっています。ガッチリ固定されていないので、簡単に雨風で倒れてしまうとのことで、確かに普通の森と比べて倒木が多いことが分かります。

また、樹海にはマグマが地下を流れることによって大小さまざまな洞穴が無数にあります。そんな洞穴の入口でお話を伺って、遊歩道へと歩みを進めました。

好奇心旺盛な小学生たちは穴の奥へ入っていきました

ガイドさんは出発前、3つの約束を伝えました。

1.遊歩道は左側を1列で通行
2.遊歩道からは絶対に出ない
3.ガイドさんが足を止めたら説明があるので雑談を止める

どんな団体にもお調子者がいるのが常で、今回もウチの小6生が約束に反するように遊歩道から少し外れたところを通りました。ガイドさんからすかさず厳しい注意が飛びます。

遊歩道から出てはいけない理由は、迷ってしまうからではありません。遊歩道の外には無数の穴が空いており、そこに草が積もって天然の落とし穴になっているからです。そう、単純に危険なのです。

私の知っている遊歩道となんか違う

注意されてからは大人しくガイドさんについて行く一行。ときどき歩みを止めては樹海に関する説明があります。

数年前まで小田原市で使っていた国語の教科書に「森へ」という文章があります。そこで語られた森林の姿がまさにそのまま目前にありました。

役目を終えて枯れた木は倒れ、倒木にキノコが生えて分解され、倒木に落ちた種子がそこから芽を出し、新たな木がが成長していく。新しい木は倒木をまたぐように根を伸ばし、朽ち果てた倒木が無くなったそこには仁王立ちするかのように脚を広げた木が残ります。倒木更新という現象です。

普段生物としてあまり認識していない植物が意思を持っているかのような姿を目のあたりにし、子どもたちには強力な説得力をもってインプットされます。

およそ2時間弱のトレッキングの間、幾度となく繰り返される知識の雨にさらされた小学生たちですが、その記憶はずっと残るものではありません。ですが、再び中学校の理科の授業で目にしたとき、体験と共に記憶がアウトプットされてくるでしょう。

私もちょうど少し前に高校生に生物を教えました。まさに森林についての内容です。教科書や資料集に豊富な図表や写真がありましたが、実際に眼前に広がる光景に勝る物ではありません。紙の上では成し得ない、貴重な知識の獲得をした気がします。

これが社会見学の醍醐味です。

竜宮洞穴でゴール

ほどよく疲れたころにゴールの竜宮洞穴に到着しました。竜宮と言えば雨乞いの神様ですね。ここも例に漏れず、雨乞いの儀式に使われたとの伝説が残っています。洞穴の奥に社があり、お賽銭箱も用意されています。

樹海の中のオアシス

そしてお約束ですが、ここもメチャクチャ気温が低い。ここまでテクテクと歩いてじわっと汗をかいた肌をキンキンにひんやりと冷やしてくれます。

さすがに氷穴ほどの冷気ではありませんが、それでも気温一ケタ台なので、猛烈に冷えます。

矢印のポイントより奥は冷え冷え

竜宮洞穴は奥行きが浅いので、冷え冷えゾーンにいる時間はごく短時間です。10分くらい冷やされまくった氷穴に比べればまだ心地よいといえるレベルです。せっかくなのでお賽銭を入れてお参りしようとしたのですが、100円玉しか持っていないので仕方なく投入。生徒からは「金持ち~」と冷やかされましたが、単純に小銭が無かったのだよ。ちなみに100円玉も1枚しかなかったので、危うくお札投入の憂き目になるところでした。

ガイドさんからたくさんのありがたいお話を頂き、お別れです。

おわりに

帰りもこれといった渋滞にハマることもなく、予定時間を少し過ぎたくらいで到着することが出来ました。

生徒のインプレッションは非常に好評で、ただ楽しいだけで無く、アカデミックな要素もタップリありました。何なら自由研究の助けになるのではないかと思います。

図鑑を読んだりテレビで自然の映像を目にするのも良いですが、実際に生で触れるのは楽しさと驚きのレベルが別格です。知的好奇心を嫌でも喚起されてしまうほど魅力的な社会見学だったと声を大にして言いたいくらい。ここ10年で最も充実した夏のイベントでした。

一番最初にも書きましたが、子どもを博物館に率先して連れて行くご家庭ならば、理科嫌いはありえません。「子どもが理科に興味が無くて……」という場合、往々にして親御さんが興味を持っていません。ひたすら遊び要素満載のレジャーも良いですが、知の喜びを与えられるのもまたレジャーなんですよね。

私もたびたび訪れる上野の国立科学博物館は、1日では回りきれないほどのボリュームと刺激があってオススメです。そんなに遠くなくても、小田原には地球博物館もありますし、フラワーガーデンもあります。丹沢ダムも面白いですよ、小田原ではありませんが。

たまにはそんな知的なレジャーはいかがですか?