小学生社会見学で山梨に行ってきたお話 前編

理科を教える事を生業にしている私には、正直理科嫌いという感覚がよく分かりません。それは当然のことで、嫌いだった事が無いからです。とはいえ、正反対の事が歴史にも言えて、私には全く魅力が分かりませんでした。

ステレオタイプな風潮ですが、小学生の理科嫌いがうたわれて久しいですね。確かに現場感覚でも国語や算数より極端に苦手とする生徒がいるのは感じますが、嫌いかと言われるとそんなことも無いような気がします。

食わず嫌いとでも表現するのが正しいでしょう。理科嫌いなのではなく、理科の何が面白いのか分からない。もっと言えば、理科の面白さに触れたことが極端に少ないのだと思います。

分かりやすいところで言えば、近所の地球博物館に足繁く通うようなご家庭ならば、お子さんが理科嫌いになることはまず無いでしょう。私もレジャーと言えば今のところ植物園、動物園や水族館などを選んでいます。かなり親の意図が透けて見えるチョイスですが、同時に文化にも触れさせようとしているので、現状はバランスを保っていると思います(まだ子どもは1歳ですが)。

やはり小さい頃の原体験はものを言います。それはプラスにもマイナスにもなり得ることで、現に私は千代というド田舎で20年間過ごしていたため、自然の知識は嫌でもつきました。もちろん理科や社会に大きなプラスとなっています。反面幼少期から虫という虫に晒されてきたため、トラウマレベルで蜘蛛が嫌いです。先日教室に蜘蛛が出たときは一人で大パニックになっていました。幸い教室には二人しか生徒がいない時間帯だったので、そこまで恥は伝播していません。

閑話休題。

やはり小学生の間に理科のリテラシーにある程度のインパクトを与えるのは有効だと思います。ようやく本題ですが、今回の夏休みにウチの塾で企画した「リニア実験施設」と「富士の樹海ネイチャーツアー」は、理科に興味の無い子どもたちに刺さるイベントになったと自賛しておきたいですね。

塾として出来る事は何かと考えたときに、学習面へのフィードバックが得られないようなものはムダと個人的に考えています。要はただのお楽しみイベントが嫌いなんですよね。今回のイベントは実にアカデミックです。珍しく私が保護者面談でプッシュしていたのは、単に私が生徒たちに見せたくて仕方が無かったからに他なりません。そして、最初乗り気では無かった生徒も行って後悔しなかったでしょう。

一路山梨へ

今回は私の知る限り、過去のイベント中最も遠いところへ行きます。最初の目的地は山梨県にある県立リニア見学センターです。

全教室合同のイベントなので、まず小田原駅に集合し、バスではるばる山梨へ向かいます。

いつものイベントは大体東京・横浜方面なので、まず小田厚に乗り、東名へ接続して行くのが常です。そして途中休憩と言えば海老名SA。いつものパターンですね。

私は完全に勘違いしていました。てっきりいつものルートかと思っていたので、小田厚の入口をスルーした時点で頭の中に「?」が浮かびます。そして、大井松田インターから東名のランプに乗り、「御殿場方面」の分岐へバスが進んで初めて「あ、逆方向だった」と気づきました。私の頭の中では完全に東京方面へ行く予定だったのです。

何という方向音痴。

プライベートでは山梨へちょくちょく行きますが、塾のイベントでは初めてですからね。慣れないもんです。

10年ぶり2度目の利用

足柄SAでトイレ休憩です。しばらく来ない間に小綺麗なサービスエリアに変貌していました。

ちなみにこの足柄SAですが、バス専用駐車場とトイレの間に車道がありません。団体旅行の引率をしている身としてはとても安心です、この作り。おなじみの海老名SAは停める位置によっては車道を2本またがないといけないので、無鉄砲な小学生が飛び出ないようにピリピリしながら見張っていないといけません。とても優しいSAです。

道中全く渋滞すること無く、予定時刻通りに到着しました。考えてみたら夏休みとはいえ普通に平日ですからね。混むはずありませんでした。

それにしてもさすが山梨県。最先端の技術の粋を集めた実験施設があるとは思えない牧歌的な風景が続きます。そして、突然山の中に現れるリニア見学センター。それっぽいところと言えば、一見高速道路と全く区別のつかないリニア線路くらいです。リニアの線路はハイテクの塊なんですけどね、見た目じゃ分かりません。

山梨県立リニア見学センターへ突撃

ハイテクを絵に描いたような建物

まず到着してすぐに集合写真を撮ります。このブログは非公式ブログですので、撮った写真は公式ブログの方でご覧下さい。

写真を撮ったらガイドの方の案内が始まりました。団体なのでガイドが付くのでしょうか。

まずはリニアモーターカーの車両モデルの内部を見学します。正直言って中や座席はただの新幹線。もう少しサイバー感があった方がそれらしくてテンションも上がるんですが、あくまで実用を優先したのでしょうか。

その後、さらっと見学ブースを通過して(!)、ガイドの方はサクサク三階へ上がっていきます。サクサク見学物をスルーするものですから、後で細かく目を通そうと思い、それぞれのブースを写真に収めていきました。

読んでいる暇が無いくらいのハイペース

ガイドさんが急いでいた理由

もう少しゆっくり案内してくれれば良いのに……と思いながら三階まで駆け足で上がってきたところで、なぜガイドさんが急かしていたのか納得しました。ちょうどリニアモーターカーの実験走行が始まるところだったんです。

ガラス張りの窓の下に実験線が通っています。文字通りガラスに張り付いて生徒たちが今か今かとリニアモーターカーが通過するのを待っていました。そこでガイドさんが一言。

「今リニアが出発しました~」

出発点から我々が待つリニア館まで、およそ25kmの距離があります。モニタで路線図を見た生徒たちは口々に「今出たばかりか~」「まだまだじゃん」とぼやきますが……みんな分かってるんですかね。車で走るのとワケが違うのよ?

そう、リニアモーターカーは時速500kmで走行する化け物です。もちろん最初から全速力で走行する訳ではありませんが、単純計算をすると25kmの距離など3分で走破してしまいます。想像を絶するスピードです。速さなんか学校でまだ習っていない小学生たちに簡単に説明してやると、理解すると同時にリニアの通過までほとんど時間がないことも分かったようで、焦ってスマホを向けて写真を撮る準備をしていました。

いよいよ私たちの目の前にリニアが現れました。と同時にあっという間に視界から消えました。その間2秒。

写真を撮ろうと試みていた生徒はほとんど失敗していたようです。流し撮りしないとボケボケの写真になりますよね。レースを見にちょくちょくサーキットへ行っていた私は、直線を通過するマシンの写真を撮るのが如何に難しいかを熟知しています。初めから写真を諦め、ムービーを回していました。大正解。

しかし、チラッと見えただけ(何しろ2秒ですし)のリニアモーターカーに生徒たちも大興奮です。ねえねえ、絶対君たちどんな形だとかどんな色だとか見えてないよね?という無粋なツッコミは我慢し、ドヤ顔で生徒にムービーを見せてあげました。

その後、ミニシアタールームに案内してもらい、リニアモーターカーについてのビデオを鑑賞しました。臨場感のある美麗なムービーで、時速500kmの世界を体験したり、リニアが実用化することで各主要都市の時間的な距離が縮まる様子をグラフィカルに理解したり、とても勉強になる映像です。

……このとき、人数を数えたところ5人足りませんでした。6年生たちのようです。

ムービーを視聴し終わって外へ出ると、記念コイン自販機の周りに先ほど行方不明だった5人が群がっています。聞くと、小銭を自販機に吸い込まれてしまったそうで、係員の方にお願いして返金待ちとのこと。集団行動から外れて好き勝手やった天罰でしょうか。

超伝導効果を目撃

映像で知識を深めた後は実物でお勉強。超伝導とはどんな状態かを学びます。

ブース担当の係員さんが超伝導体を液体窒素で極低温まで冷やします。超伝導体は、絶対零度に近づくと電気抵抗が0になるという性質を持っています。普通の磁石を磁石の上に置こうとしても、はね飛ばされたりひっくり返ってしまったりして上手く浮かびません。超伝導体は、磁石の上に置こうとすると磁界が超伝導体を上手く支えて浮いたままになります。この「マイスナー効果」によって、超伝導体は宙に浮いたままになるのです。

係員さんが超伝導体を磁石で出来たレールの上に浮かべました。レールはジェットコースターのように急降下したり、カーブしたり、逆さまになったりしています。ただ、レールには壁も何も無いため、ただ浮いただけの超伝導体を滑らせると、間違いなくカーブでどこかへすっ飛んでいってしまうでしょう。

ここで係員さんが浮いている超伝導体をレールにグイッと押しつけます。と言ってもレールにくっつくわけではなく、レールからわずかに浮いたまま先ほどよりピタッと安定しました。これを「ピン止め効果」と言い、この状態で超伝導体を滑らせるとカーブでレールから吹っ飛ぶ事も無く、なんと逆さまになっても落ちずに滑ります。

その華麗な走行映像をちゃんと記録していないあたりがブロガーになり切れないところなんでしょうね。ついつい話を聞くのに夢中になってしまいました。しかし、小学生には少々話が長すぎたのか、焦れている子も何人かいましたね。

係員さん自ら「長くなりすぎました」と仰っていましたが、大変興味深い内容でした。私は大学が物理専門なので同じ実験をやっていますが、小学生たちはおよそ見たことのない貴重なものとなったでしょう。

お土産に必死な子たち

こういった科学館といえばお土産。生徒たちはお土産ショップはどこかと探しています。見学して高まったリニア熱にトドメを刺すようにお土産屋が待ち構えているのが普通なのですが、商売っ気のない山梨県は、何と離れの建物にお土産屋を作ってしまう奥ゆかしさ。ぶっちゃけ不便。

しかし、実は移動時間が迫っていました。リニア館が想定以上に見所たくさんだったため、残り時間がわずかだったのです。小学生にお土産を買うなというのはとても酷な話ですから、やむなく昼食をバスで食べることで時間を節約し、その分をお土産選びに費やしました。

私もお土産屋を物色しましたが、目についたドクターイエローのDVDの値札を見ると、無情の8000円。ちょっと高すぎやしませんかね。どうせ大人しか買わないだろうと思って足下見てんじゃないでしょうか。個人的にはプラレールとか買い集めたいところですが、娘は興味を示さないだろうと思い断念。信玄餅は美味しそうでしたが、それリニアと関係なくない?という生徒のツッコミによりこちらも断念。

結局ウチの教室の子たちが最後の最後まで品定めに手間取り、集合時間を若干過ぎてしまいました。レジが思いの外大混雑していたので、仕方ありませんね。

さて、バスで昼食となってしまったエコール学院一行ですが、ちょっとションボリしているかと思いきや生徒たちはご機嫌です。当初は河口湖畔の公園で優雅に食べる予定でしたが、考えてみたら涼しいバスで車窓を眺めたりおしゃべりに花を咲かせたりしながらご飯を食べた方がよいのかもしれません。ケガの功名でしょう。

話は午後に続きますが、4000字を大幅に超えてしまったので、後半へ続きます。